【神奈川大学 彭国躍(ホウ・コクヤク)教授に聞く】私たちが外国語を勉強する理由と子どもの外国語習得について

2019年11月1日

ペラペラ

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子どもの英語教育について、あなたは何から始めますか?英語の教材や教室、先生を探すかもしれませんね。もしくは、英語を習っているお友達に話を聞くこともあるでしょうか。

でも、ペラペラ部ではあえて「ちょっと待って」とあなたにお伝えしたいのです。

子どもの英語学習は長期戦。時間もお金もかかります。また、今後のお子さんの人生選択にも大きく影響します。

だからこそ、お子さんの英語学習の手段を探し始める前に、立ち止まって考えてもらいたいことがあるのです。

それは、

「なぜ、私たちは外国語を学ぶのか?」

ということです。

あなたは考えたことがありますか?英語をはじめとする外国語を学ぶ理由です。

あなたはなぜ、お子さんの英語教育をスタートさせようと思ったのでしょうか。少し考えてみてください。

  • 今どき話せないと、かっこわるいから?
  • 早く始めないと、ついていけなくなるから?
  • 海外で活躍できるようになってほしいから?
  • 異文化交流をさせたいから?
  • 大学受験で必要だから?
  • 就職に有利だから?

どれも分かりますし、あり得る理由です。私が学生時代に留学した理由は「外国に住んでみたいから」でした。

しかし、今回あなたにお伝えしたいことは、こうした理由の先にある本質的な理由です。言い換えると、外国語を習得する意義や価値についてです。

つまり、英語を学ぶ喜びになるものとは何かを考えることです。

習得の意義や価値がはっきりすれば、心から納得してお子さんの英語学習を始めることができます。また、落ち着いてお子さんの成長を温かく見守ることもできます。

なんとなく選んだ学習方法よりも、意思を持って選んだもののほうが、お子さんにとって効果的であることは言うまでもありませんね!

そこで、今回は外国語を学ぶ意義や価値について、筆者がこの夏に目から鱗が落ちる思いをした出来事をあなたにシェアしてお伝えします。

外国語習得は発想や思考を豊かにすることができる

2019年の夏休みに筆者は息子の大学オープンキャンパスに付き添いました。向かった先は横浜市にある神奈川大学横浜キャンパス。外国語学部の学部説明会に参加したのです。

そのとき、学部説明を担当された、ある先生の一言が衝撃的だったのです。

その先生とは・・・

  • 神奈川大学 外国語学部 中国語学科教授 彭国躍(ホウ・コクヤク)
  • 研究分野:「社会言語学」「認知言語学」「対照言語学」
  • 出身:中国上海(日本滞在歴30年)
  • 神奈川大学のホームページはこちら
    https://www.kanagawa-u.ac.jp/
    (2019年10月現在、外国語学部を含め、7学部および大学院8研究科を有する総合大学)

彭先生は私たち参加者に問いかけられました。「なぜ私たちは外国語を学ぶのでしょうか?本質的な意味で、です」と。

このとき筆者は答えに窮しました。自分が学生時代に留学したときのことを思い出してみても、「外国に住んでみたいから」など表面的な答えしか出てきませんでした。

その問いに対して、先生は次のようにお答えになりました。

「外国語を学ぶと発想や思考を豊かにすることができるからです。」

彭先生のお答えを聞いて、このとき筆者は目が覚めるような思いをしました。これこそが外国語を習得する意義だと。

英語習得を通して子どもたちに身に着けてほしいものはまさに豊かな発想や思考です。

彭先生は続けて、興味深いことをお話してくださいました。

「それぞれの言語には言語で縛られた思考が存在します」と。

つまり、日本語には日本語特有の思考があり、それが他の国にないことがある。逆もしかり。

外国語を習得することは、その言葉にある発想や思考を学ぶことになりますから、日本語での限られた発想や思考を超えることができるのです。

子どもたちの世界がどんどん広がっていくのがイメージできますね!

説明会での彭先生のお話を聞いて感銘を受けた筆者は「先生のお考えをペラペラ部の読者にも伝えたい!子どもたちの英語習得に困惑している保護者の方たちにも聞いてもらいたい!!」と強く思ったのでした。

そこで後日、神奈川大学さんへ彭先生のお話をペラペラ部でシェアさせていただけるようお伺いを立てたところ、ご快諾いただきました。

おまけに彭先生が説明に使用されていたスライドの一部の引用許可まで頂戴しました。そのスライドには多言語を使用することの価値を説明したものでした。

彭先生による、多言語を使用することの4つの価値

  1. 柔軟な思考法の形成
  2. 多様な価値観への理解
  3. 多文化共生能力の育成
  4. アイデンティティの確立

※彭先生の許可をいただいて引用しています。

いかがでしょうか。

あなたのお子さんが外国語を習得することで、自己を成長させたり、豊かな人間関係を築いていけるのだとすれば、親としてこれほど嬉しいことはないのではないでしょうか。ぜひ、彭先生の4つのお考えを胸にお子さんの将来を考えてみてくださいね!

さらに、彭先生にはペラペラ部の質問にもお答えくださいました。

あなたの気になる「子どもの外国語習得に最適な時期」と「子どもの外国語習得を実らせるポイント」を解決するヒントになれば幸いです。

ぜひ、今後の英語学習の計画にご活用くださいね。

子どもの外国語習得に最適な時期は?子どもの外国語習得を実らせるポイントは?

※彭先生には英語を含む外国語教育としてお答えいただいています。

-先生のご専門「社会言語学」「認知言語学」「対照言語学」について。それぞれ、どのような研究か教えてください。

答:言語現象は、客観的な自然現象ではなく、社会や集団の中で形成された共同主観的な現象です。そのため、ことばの本質を知るためには、ことばと社会の仕組みや脳の働きとの関係を明らかにする必要があります。

「社会言語学」

社会と言語の関係を研究する分野。主に敬語・ポライトネス、外来語、ピジン(※異文化の交易などで異なる言語を持つ者同士が作り上げた補助言語のこと)・クレオール(※ピジンが母国語化したもの)、バイリンガリズム、新方言の誕生、言語の消滅などのテーマを扱う。

「認知言語学」

認識・知覚と言語の関係を研究する分野。主にメタファー(※隠喩 /いんゆ)、言外の意味、世界カテゴリー、発話の視点、時・空間の捉え方などのテーマを扱う。

「対照言語学」

人間の言語の普遍性を明らかにするため、個々の言語の間にある相違点と共通点があるのかを究明する分野。

-外国語習得を始める最適な年齢について、先生はどのようにお考えでしょうか。

外国語学習を始める時期について、理論上は、条件が同じであれば、記憶力、集中力、使えるエネルギーや時間などの観点から若ければ若いほどいいですが、現実では、同じ条件の人間は中々いないので、結局は「興味・関心」と「需要・必要性」が学習者にとって一番大事なファクターになります。

そのどちらかがあれば、いつ始めても最適と言っていいように思います。そして、子供の場合は「興味・関心」がより大事で、大人の場合は「需要・必要性」がより大事ではないかと思います。

-どのような視点で外国語習得の方法を選べばよいか先生のアドバイスをお願いします。

答:子供の外国語教育は、教えるというよりも、楽しく触れさせることが大切で、即効性を求めずに、子供の心に「種を植え付ける」という作業として捉える必要があると思います。

種の植え方が正しければ、つまり「あの頃すごく楽しかった」という記憶を作ることに成功すれば、子供が成長する過程でいつか、何らかの形でその種が誘因となり芽を出し、花を咲かせ実を結んでくれると思います。「好きこそものの上手なれ」ということわざは、発達心理学におけるモチベーションの研究に裏付けられています。

外国語教育と学習の最適な方法は、「聞く、話す、読む、書く」の4技能において、できる限り、その外国語に「濃密な接触」を持たせる環境をつくることが一番効果的だと思います。私自身も大学教室の現場でそのような方法を実践しています。

まとめ

以上、外国語学部中国語学科の彭国躍教授のお話をお届けしました。

外国語を学ぶと発想や思考を豊かにすることができると彭先生から教わりましたね。そして、習得における4つの価値を共有していただきました。

  1. 柔軟な思考法の形成
  2. 多様な価値観への理解
  3. 多文化共生能力の育成
  4. アイデンティティの確立

また、気になる「子どもの外国語習得を始める最適な時期」と「外国語習得を実らせるポイント」についてもズバリお答えいただきました。

子どもの外国語習得を始める最適な時期

「興味・関心」と「需要・必要性」があれば、いつ始めても最適。子供の場合は「興味・関心」がより大事で、大人の場合は「需要・必要性」がより大事

外国語習得を実らせるポイント

子どもの心に「あの頃すごく楽しかった」という記憶の種を正しく種を植え付けることができれば、成長の過程で種が芽を出し、花を咲かせ、実を結ぶ!

子どもの外国語教育を成功させる3つの秘訣

  1. 即効性を求めない
  2. 楽しく触れさせる
  3. 「聞く、話す、読む、書く」の4技能において、できる限り濃密な接触を持たせる環境を作る

ぜひ、彭先生のお考えを参考に、あなたのお子さんの英語学習を検討してください。お子さんにとってよりよい学習の一助となりますよう、心より応援しています!

最後になりましたが、彭先生、この度はお忙しい中、読者のみなさんのために貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

また、今回の記事執筆に関してご調整いただきました神奈川大学入試センター、広報課の皆さまには心より御礼申し上げます。

神奈川大学のホームページはこちら

https://www.kanagawa-u.ac.jp/

(2019年10月現在、外国語学部を含め、7学部および大学院8研究科を有する総合大学)

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中村香代

中村香代

英語落ちこぼれ中学時代を過ごしました。「魔女の宅急便」に憧れて「外国に住みたい!」と思うようになり、高校時代は英語を猛勉強。その後アメリカ ウィスコンシン州に留学。商社、メーカーでの貿易業を経てライターに。微妙なニュアンスやイメージが分かりやすい記事をお届けします。